最高のバッドエンドな鬱映画と評判の高い『ミスト』をAmazon Prime Videoでようやく観た。
(以下、ネタバレ全開なので未見の方は閲覧を避けてください)
▼Read More噂にたがわぬ鬱映画だった。原作のスティーブン・キングの小説は読んだことがない状態で観たので、ラストの展開はちょっと想像を超えるレベルでズドンと心にのしかかってきた。絶望的な瞬間に流れ出す、Dead Can DanceのThe Host of Seraphimも絶妙。リサ・ジェラルドの宗教的で観念的な歌声が耳から離れない。
物語の構成自体は言ってしまえば『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』なわけだけど、ヒネリが本当にエグイ。観ている側はデヴィッドの側に肩入れするように仕向けられているから、心のどこかで狂信者の女性の一派は助からなくて、それまで理知的に振舞っていたデヴィッド達の一派は助かるのだろうとどうしてもバイアスがかかってしまう。
まあホラー映画だから最悪デヴィッド達の一派も全滅するかもなあ、程度には正直想像はしていたものの、それがデヴィッドによる自身の息子を含む仲間全員の射殺というのは後味がもの凄く悪い。でも、衝撃的な結末はそこからまだ先にあるという、二段構えのさらなるエグさ。しかも、よりによって残った狂信者達一派は助かっている皮肉。
いや上手い。こんなヒネリを加えてくるとは思いもよらなかった。観ている側のバイアスを上手く利用して、それを裏切って来るとは。
確かに冷静になって観返してみると、デヴィッドの判断と行動は合理的で常識的なように思われるけど、結果は全て裏目にでてる。灯りを窓に近づけ昆虫を呼び寄せてしまったり、そばの薬局へ薬を取りに行き犠牲者をより増やしてしまったり、スーパーから脱出するという選択肢をとったり、ガソリンが限られている状況の中で妻の様子を見に行ったり。
その時その時では十分な動機と理由があるし、自分もその場にいたら同様の選択をするだろうと思わせるものばかり。でも、結果は全て望まない方向へと進んでしまう。何ともつらい。結局、人は置かれた状況の中で常に自分が信じる最前の対処を行おうと対応をするものだし、こんな極限状態に置かれたら何とかしてその状況を打破しようともがくものだと思う。
ただし、それが必ずしも良い結果につながるとは限らない、行動をしないことが正しかった、と突き付けるラストは本当にエグイ。観終わった後も心がざわざわして長いこと動悸が治まらなかった。最高の鬱映画と評判になるだけのことはある。すごく嫌な映画だと思う。即、モノクロ版も収録されているDVDのコレクターズ・エディション版を注文した。